「コーヒーが冷めないうちに」2017/07/20 09:34

「コーヒーが冷めないうちに」
全体が緻密に編まれていて面白い話だった。さすが、本屋大賞。
2話目が良かった。

で、コーヒーのはなし。
お義父さんのコーヒー。お義父さんの思い出と言えばこれ。

同居ではないので、時々子供を連れて遊びに行ったときに顔を合わせるくらいのものだったから。
だけどその時は毎回、にこにこしながら近づいてきて「コーヒー、飲む?」と声をかけてくれるのだった。
嬉しそうだった。
ごろごろとミルをひいて、豆の香りがしてくる。コポコポとコーヒーメーカーの音。美味しいコーヒー。
煎れてくれるのはだいたい15時すぎ。実はコーヒー好きなくせに夕方近くに飲むと夜に眠れなくなる。分かってるんだけど。「はい、いただきます」と答えると、あまりに嬉しそうな顔をするので‥
お義母さんは「濃すぎて胃が痛くなる」から飲まないのだそうだ。他の家族もインスタントを飲んでいる。
「ええ、いただきます」
最後にそう答えたのはいつだったか、覚えていない。

「お弁当の時間」2011/12/28 11:11

 日本中のいろいろな職業の人のお弁当が撮影されている。その弁当の持ち主の写真。弁当にまつわるエピソード。全編その羅列なのだが。
 ある人にとって日常でも、別の人にとっては非日常。取り上げられることのない人々の生活が、写真と、インタビューの中からほろりほろりと浮き上がってくる。そのひとつひとつがべつべつの色を鈍く、暖かく出している。冬の寒い日に、温かいスープをいただいた後のような、「ほっこり」した感じ。ちょっと時間がたったらまた読みたいなと思う。

「お弁当の時間」
阿部了(写真)・阿部直美(文)
木楽舎 ISBN978-4-86324-022-3